【弁護士が解説】公正証書遺言があっても遺留分の請求はできるか
公正証書遺言は、形式の不備による無効のリスクがほとんどない形式です。
そのため「公正証書遺言があれば内容は絶対に守られる」と考える方も少なくありません。
今回は、公正証書遺言と遺留分の関係を整理し、実際に遺留分の請求が可能なのかどうかを見ていきます。
公正証書遺言とは
公正証書遺言とは、公証役場に所属する公証人が、遺言者の意思を確認しながら作成する遺言書です。
自筆証書遺言や秘密証書遺言と異なり、専門家である公証人が内容・形式をチェックします。
そのため、形式不備で無効になるリスクがほとんどない点が大きな特徴です。
作成された公正証書遺言の原本は、公証役場に保管されます。
遺言者や相続人には「正本」「謄本」が交付され、万が一遺言書が紛失・破損しても、公証役場から再度証明を受けられる仕組みになっています。
そのため、偽造・改ざんの心配がないのも大きな利点です。
遺留分とは
遺留分とは、特定の相続人に法律で保障されている「最低限の取り分」です。
被相続人が「全財産を特定のひとに相続させる」と遺言を書いたとしても、遺留分を侵害する内容であれば、他の相続人は遺留分侵害額請求によって取り戻せます。
遺留分が認められるのは、以下の相続人です。
- 配偶者
- 子ども(代襲相続人である孫も含む)
- 親(直系尊属)
一方で、兄弟姉妹には遺留分はありません。
公正証書遺言があっても遺留分の請求はできるのか
結論として、公正証書遺言があっても遺留分の請求は可能です。
民法で定められた遺留分は「最低限の取り分」であり、遺言によっても奪えないものです。
遺留分を侵害された相続人は、遺言の有無や形式にかかわらず「遺留分侵害額請求」を行う権利があります。
遺言の内容が遺留分を侵害している場合は、その部分について、相続人の請求により修正される可能性があります。
遺留分侵害額請求の期限
遺留分を侵害されたことを知った日、つまり「相続が始まったこと」と「自分の遺留分が侵害されていること」の両方を認識してから1年以内に意思表示をしなければなりません。
相続開始時に侵害を知っていなかった場合でも、10年を過ぎると請求できなくなります。
まとめ
公正証書遺言は、形式的に最も確実性の高い形式です。
しかし遺留分という相続人の最低限の権利までは排除できないため、「公正証書遺言があるから絶対にそのとおりになる」とは限りません。
相続は、法律上の仕組みだけでなく、家族の感情や生活にも深く関わる問題です。
法律面で不安がある場合は、専門的な知識を持つ弁護士に相談するとよいでしょう。
当事務所が提供する基礎知識
-
親権をめぐる裁判|か...
離婚をする場合に発生する問題の一つとして親権争いがあります。当初は夫婦間で協議して親権者を決定しようとしたもの […]

-
自己破産のメリットと...
■自己破産とは自己破産という言葉自体は、耳にしたことがある方が多くいらっしゃると思います。自己破産とは債務整理 […]

-
家賃滞納が発生したら...
現在の法律においては賃借人の保護が手厚いため、家賃滞納があった場合でも賃貸人が賃借人に対して強制退去を行うには […]

-
離婚後の養育費の平均...
「幼い子どもがいるが、離婚を考えている。経済的な面が心配だが、養育費はどのくらいもらうことができるのだろうか。 […]

-
不動産売買におけるト...
不動産売買には不動産売買前、不動産売買中、不動産売買後の各段階に応じて多様な紛争が発生します。不動産売買前に生 […]

-
離婚調停の申立てから...
離婚調停とは、家庭裁判所に調停を申立て、調停委員を交え、夫婦関係の解消に向けた話し合いを行う手続きをいいます。 […]

よく検索されるキーワード
弁護士紹介
弁護士中野 宗一郎
事務所概要
| 名称 | ゆずりは綜合法律事務所 |
|---|---|
| 弁護士 | 中野 宗一郎(なかの そういちろう) |
| 所在地 | 〒651-0087 兵庫県神戸市中央区御幸通8丁目1-6 神戸国際会館16階 |
| 連絡先 | TEL:078-332-1722 / FAX:078-332-1733 |
| 対応時間 | 平日 9:30~17:30(事前予約で時間外も対応可能) |
| 定休日 | 土・日・祝日(事前予約で休日も対応可能) |