遺留分侵害額請求権とは?~手続き方法と時効について~
1 遺留分
ご家族が亡くなった後、財産を分けようとしていたところ、遺言書に「長男に財産の全てを譲る」というような記載があり、他の相続人には一銭も相続取り分がない、というような場合があります。
もちろん、他の相続人全員が納得していれば問題はありませんが、不公平感は否めません。
この不公平を是正する制度が、遺留分制度となります。
遺言書がある場合には、その遺言書が有効である限り、原則として遺言書に従って遺産の分配を行うことになりますが、上記のように一人だけに承継させる遺言が記載されていた場合などでは、一方的に他の相続人の相続分が奪われてしまいます。
中には、亡き親の遺産をあてにしていた子もいることでしょう。その意味で、いかに遺言者が遺言を自由にできるとはいえ、相続人にも最低限度の相続分を保障して生活保障を図ろうというのが遺留分制度の趣旨です。
2 遺留分侵害額の計算
遺留分は、被相続人の遺産の総額に、遺留分の率(原則2分の1、親のみが相続人の場合に限り、3分の1。民法1042条1項)を乗じることで計算されます。
例えば、被相続人の遺産の総額(遺贈や生前贈与で譲渡された財産の金額も含む)が3000万円で、相続人は長男、長女、次女の3人だとすると、遺留分の総額は、3000万円×1/2=1500万円となりますから、これを3人の法定相続分に応じて分配し、1500万円÷3=500万円が、各人の遺留分となります。
このように、長女や次女にも500万円の遺留分が認められるにもかかわらず、「長男に全ての財産を譲る」という趣旨の遺言書が出てきて、そのとおりに相続が実行された場合には、長女・次女は1円も受け取ることができなくなってしまい、各自の遺留分が侵害された状況となります。
そこで、長女・次女は、長男に対し、各自、遺留分侵害額500万円の支払を求めて請求できるのが、遺留分侵害額請求です。
3 遺留分侵害額請求の方法
この遺留分侵害額請求はどのような手続で行うことができるのでしょうか。
まず、第1には内容容証明郵便で請求することが手段として考えられます。遺留分侵害額請求は、「相続の開始…を知った時から1年間行使しないとき」に時効によって消滅してしまうため(民法1048条)、内容証明郵便で請求することにより、この時効の進行を止めることができます。
ただ、内容証明郵便で請求して示談交渉をしても解決できない場合には、家庭裁判所に遺留分侵害額請求の調停を申し立てることが考えられます。
それでも合意に至らないときには、裁判を提起することになります。
訴訟において、遺留分侵害の事実とその額を主張立証することができれば、裁判所が相手方に対して、遺留分侵害額の支払いを命ずることになります。
4 時効の注意点
注意すべきは、この遺留分侵害額請求権を時効にかからせないことです。
遺留分侵害額請求権は、「相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から【1年間】行使しないとき」には時効消滅してしまいます。1年は非常に短期であっという間ですので、早めのご相談をお勧め致します。
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